「レアかミディアムかウェルダンか?」
「待ってるの面倒くせぇからレア」
「僕は、ウェルダンがいいです」
「焼きすぎって固くねぇか?」
「ウェルダンは焼きすぎという意味ではありません。寧ろ、焼きあがりも待てないと言う、響也先輩の方が心配です」
「はぁ?美味いもんは美味い、でいいじゃねぇか」
「ははは、響也はわかりやすいな」
どうやらハルは、ウェルダン、響也はレア…という答えらしい。
そうなると、ウェルダンの千秋と、ミディアムのあたしが同点2ポイント。
如月くんの答えで、勝敗が決まる。
「で、律はどうなんだ?」
「……その前に、聞いてもいいか、」
「はい?」
「この質問の意味はなんだ」
すぱーん…と、当たり前の疑問を投げかけられ、思わず言葉に詰まる。
「レア、ミディアム、ウェルダン…どれが好きか、ということだったが、それが何に対してなのかがわからない」
「いや、わからないって…そう言われたら、肉の焼き方だろ?普通」
「あぁ、普通はそうだ。だが、提示されていない」
「そう言われてみればそうですね。さすがです、部長」
「いやいやいや、おまえらおかしいだろ。他に、何があるって言うんだよ?」
真面目に考えられた星奏の部長さんにどういえばいいかわからず、蓬生の方へ助けを求めるよう視線を向ける。
それを受けた蓬生は、やれやれと肩をすくめると、あたしの隣にいる千秋へ声をかけた。
「…ここらが潮時とちゃう?」
「あぁ、そうだな」
立ち上がった二人を見て、未だ答えを告げていない部長さんが千秋へ声をかけた。
「待て、東金。まだ俺は質問の意図を聞いていない」
「大したことじゃない」
「だが、答えを求められたならば、答えねばなるまい」
「律は真面目だな」
「…クソがつくほどにな」
「んじゃ、簡単に言うから、答えてくれ…俺がウェルダン、蓬生がレア、で…こいつがミディアム。どれがいい」
「違うっ、違うよ千秋!ちゃんと肌の色って言って!」
「せやね。千秋の言い方やと、誤解を招くわ」
けれど、部長さんの答えを聞く前に、大きな声があがった。
「なっ、なにー!?肉の焼き加減じゃないのか!?」
「そんな………まさか、知っていたんですか!榊先輩!」
「いや、俺はなんとなくそうかな…と」
「ぐぁあああああっ!なんつーもん選んじまったんだ!」
「ありがとうな、弟くん。あんただけが俺を選んでくれたわ」
「違うっ!あんたを選んだんじゃねぇ、オレは肉を選んだんだ!」
「………東金さん、ですか」
「ま、気を落とすなよ、ハル」
「やっぱり、こんぐらいの反応が欲しかったわ」
「ははは、すまないね。君の期待に答えてあげられなくて」
「いややわ、応える気なんて、さらさらないくせによう言うわ」
「ちゃんの期待には、応えたつもりだけどね」
明らかにテンションの下がった二人と、別の意味で火花を散らす二人。
残されたのは腕を組んで考えている部長さんと千秋、そして結果を待ってるあたしだけ。